こんにちは。和尚です。
今回はみなさんが特に気にしておられるお葬式についてのお話です。
あなたはどんなお葬式をご希望ですか?

ご両親のお葬式
両親が80歳を過ぎたので、もしものことを考えて葬儀のことを話し合ったら、両親はできるだけ盛大にやってほしいというのです。
私としてはできるだけ小規模にと考えていたので、意見が食い違いました。両親には旅行などをして楽しんで余生を送って欲しいです。
お葬式を盛大に行うということに何か意味があるのでしょうか?
現代では様々なお葬式の形があります。インターネットで「お葬式」と検索してみると、ほとんど大手の会社が参入しており、小さなお葬式や家族葬、コンパクトといった言葉が真っ先に出てきます。
私の地域では田舎なので、まだまだ昔からの伝統的なやり方で行っております。
加担いただくお坊さんもしっかりと古式に則った役割を担い、非常に厳かです。しかし最近はコロナや時代の流れにより、残念ながらそういった伝統的なことがだんだんとできなくなってきました。
その中でいかにご家族が満足し、心に残るお葬式ができるかが問われる時代です。
さて、あなたのご相談のことですが、ちょっと厳しいことを申し上げます。あなたを一生懸命に育ててくれた親が最後のわがままとして聞いてほしいと意思表明をしておられます。
あなたは今までどれだけのわがままをご両親に聞いてもらったことか・・・。
お葬式はできるだけ小規模でと考えるのは、貴方の勝手なご都合です。
経済的な面や周りの付き合いなどのことはそれぞれにあるだろうとは思いますが、それも理解した上でご両親は盛大にと頼んでおられるのです。それが最後の愛する我が子にしか言えないわがままなのです。

老師さまの言葉
私は修業時代、老師さまの付き添いであるお葬式に行ったことがありました。それはそれは豪勢なお葬式でした。
どのぐらいかと言いますと、お飾りやお坊さんの数はもちろん、参列者が最後順番に焼香するのに1時間以上かかり、焼香中に読むお経がもう無くなるほどでした。
最初はなんだか派手で見栄えばっかりのお葬式だなと思っておりましたが、式が終わり最後に老師様がこうおっしゃられました。
「葬式というものは、個人が今までお世話になった人たちに、お礼がしたくてもできないのだから、代わりに家族が精一杯お礼をさせてもらう儀式なんだ。
生前は無茶苦茶に迷惑をかけ続けてきました。どうしようもないこの自分がこうして最後まで生かしてもらったのは、皆さんのおかげです。
しかしこんな私でも唯一愛情を注いだ子供がいます。
お願いします。私が死んだときには世話になった人たちに伝えてください。あなたたちのおかげで素晴らしい人生を全うできたと。
それを私の代わりにあなたの口から精一杯伝えてください」と。

その話を聞いた瞬間、私の心の中でこのお葬式が「豪勢」から、「荘厳」と変化したのです。そして同時に親族のお顔を見渡すと、感謝と故人に対する誇りの念が合わさったような表情で、涙を流しながら参列者に頭を下げておられました。
あとでお聞きしたところ、亡くなられた方は大会社の社長で、毎朝お経を読み、家族と社員、そしてお客さんを大切にされ、非常に仏心ある方だったそうです。
ご両親のおっしゃられる「盛大」というのは、見栄を張り、奇をてらうということではなく、出来る限り精一杯感謝の心を込めたお葬式でお世話になった人々に伝えてほしいという意味なのです。
つまり、お葬式は死者のためだけのものではなく、今生きている人たちにその心を伝えるための大事な儀式なのです。たとえ小さいお葬式であっても、こういうお気持ちを持ってされることが一番大切です。

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オススメ本
お葬式の言葉と風習
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日本各地では、その土地土地の文化を融合させた独特なお葬式が行われていました。もちろん式自体は各宗教でされるのですが、その独自性たるや読んでみて非常に不思議で面白いものでした。しかし逆にその土地を愛し、そこで生きた人たちを盛大に送るための心が込められていたことがわかります。
心打つ内容の一文
「国替え」「広島にタバコ買いに行った」「耳ふたぎ」
新しい生活スタイルで考えるお葬式・ご供養
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あの「お坊さんバラエティー ぶっちゃけ寺」にもご出演された現役お坊さんが様々なお葬式に対する疑問に優しくお答えされています。コロナによるお葬式の現状や、お葬式の種類、お布施、戒名について、わかりやすく書かれています。最新で安心して読める一冊。
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数年前にとても有名になった映画。管弦楽団の元チェロ奏者が職を失ったことをきっかけに、納棺師の職に出会ったことから人と向き合い死と向き合い、また自身の生き方を見つめながら成長を遂げていく物語。リアルな死の現実を受けいれながら、笑いあり、涙あり、と主人公が葛藤しながら物語は進んでいきます。死の尊厳を改めて教えてくれる作品。
心打つ内容の一文
「あいつ、今までで一番きれいでした。本当に、ありがとうございました」
お葬式
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言わずと知れた、伊丹十三の傑作映画の一つ。「おくりびと」とはまったく真逆の作品。コミカルで生々しく、人間の欲や営みが描かれています。昭和時代の背景も織り交ぜながら、シュールでテンポよく、楽しく観れる映画となっています。笑ってはいけない場面をここまで表現させる。さすが名監督といったところでしょうか。
心打つ内容の一文
「俺は春に死ぬ」