こんにちは。和尚です。
落ち込みすぎてどうしようもない・・・。
悲しくて苦しくて、もうだめだ・・・
行き詰った心を救ってくれる素敵な存在を見つけよう。

中島らも
もう今から約20年ほど前に亡くなられた、作家でコピーライターの「中島らも」というサブカルチャーの巨匠がおられました。
時は1990年代、私が学生の時によく彼の本を読んでいたのですが、当時は今よりもユルい時代とはいえ、かなり私にとっては衝撃的な内容ばかりの本でした。
処女作「今夜、すべてのバーで」では、自らがアルコール中毒で苦しんだ心理状態を生々しく残酷に描かれていたり、また長編小説「ガダラの豚」では、アフリカの呪術や新興宗教、アル中などの現代のダークな部分に光を当てまくった、壮大なミステリーホラースペクタクルサスペンスSF小説を執筆されるなど、心躍るような内容ばかり。
それらを片っ端から読み、「らもワールド」にどっぷり浸かっておりました。
こんな紹介の仕方だと読む気になれない・・・、と思われますが、それがとても読みやすい。というのは、らもさんの文章はとても心に響くような美しさがあり、エゲツないのだけれど小説なのでどこか俯瞰しながら、冷静に読めるようになっているのです。
この辺はさすが文章の達人。
文学や芸術というものはこういった常軌を逸したものを表現する、美しくて狂気的な世界なのです。
しかしこんな内容は、やはりご自分の苦悩や葛藤、様々な経験から生まれてくるのであって、常人の私などには到底表現することができない世界です。
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禅問答語録の王と言われる「臨済録」に書かれている言葉。
門より入るものは家珍にあらず、
自己の胸襟より流出し持ち来たれ
ただ聞いただけの言葉は本物の宝物ではなく、あらゆる苦悩や経験によって心の底から捻りだしたものこそが生きた言葉なのであると。
まさにらもさんはそういったご経験をし、様々な言葉を残された稀代の作家の一人であることがいえるでしょう。
その日の天使
らもさんは作家やコピーライターを手掛けるようになり、あの独特で社会の常識から逸脱したような表現と語り口が世間では魅力になり、大変人気になりました。
しかしその人気とは反比例しながら多忙を極める生活となり、それにつれて酒と薬に溺れ、ついには廃人となってしまったのです。

生前はその苦しみの中で何度も自死(自殺)を図ったそうです。
ある日、ついに精神的に限界がきてしまい、「今日は絶対に死のう」と決心されたのでした。
用意をし、夕方部屋でその瞬間を迎えようとしていました。さあ!決行というところでいきなり・・・。
「い~しや~きいも~ 」
と外から焼き芋屋さんの売り声が耳に入ってきたではありませんか。
らもさんはこの平和な声を聴いて、
「人が真剣に今から死のうと思ってんのに、なんちゅう間抜けな声でゆーとんねん・・・」
とバカバカしくなり、一気に正気へと戻ったそうです。
後にこのエピソードを笑いながらお話されており、「その日の天使」というエッセイを書かれました。
そして読者にはこんな言葉を贈っています。
一人の人間の一日には、必ず一人、「その日の天使」がついている。憂鬱を笑い飛ばし、絶望の淵で微笑む・・・。

自分の世界だけで苦しんでいるときこそまわりを見てください。そこには必ずあなたの天使がそばにいるはずです。
その天使なんてなんでもいい。子供であったり、動物であったり、友人であったり、はたまた本や面白い番組など・・・。
見つけてみてください。
苦しみを味わったからこそ人は優しくなりそこに慈悲が生まれる。
どん底を味わったからこそ、その経験を笑い飛ばせる。
あなたの天使を教えてください。