こんにちは。和尚です。
昔ギターを弾いていて、とてつもない大発見を思いつきました。
世界の名だたる名曲をすべてマイナーコードに変換すれば、名曲になるのでは!?
この世紀の大発見を早速友達に試してもらい、ビートルズの「オブラディ オブラダ」をマイナーコードで歌わせてみたところ、そいつは「Desmond has a barrow in the marketplace・・・😢」とただ単にものすごく悲しい顔で歌いはじめたので、「これはダメだ・・・」と確信し、見事にこの大発見をあきらめることとなりました。
さて、今日はこのビートルズの名曲「yesterday」の誕生秘話から禅のお話へと続けていきます。

yesterday
ご存じの方もいらっしゃるとは思いますが、「yesterday」はビートルズのポール・マッカトニーが作詞作曲した超名曲のひとつ。
この曲が生まれた逸話がとてもおもしろい。
ポールがロンドンのウィンポール・ストリート57番地。当時ガールフレンドの実家の屋根裏部屋で暮らしていた時のこと。
ベットで寝ているときにその曲は頭の中で流れてきたそうです。
「目が覚めたら頭の中で素敵なメロディーが流れていた。そして、これは何だろう?って思って、ベッドの右側にある窓辺のアップライトピアノで、Gコード、F#m7、それからBからEmへと繋がり、そしてGに戻るというコード進行を弾いてみた。」(本人談)
彼はしばらく自分が考えた曲とは思えなかったらしく、
「ついにはまるで警察に拾い物を届けるような気分になった。誰かが数週間以内に自分のものだと主張しないのであれば、もう自分のものにしようって思ったのだ。」(本人談)
「HELP!」というアルバムに入っているのですが、どれもアップテンポな曲の中に一際静かに佇む花のような、切なく儚く、美しいメロディー・・・。
ポールが自分の曲ではないと思うほど、この曲は完成されています。
なぜなら世界が名曲として評価しているからです。

一無位真人
よく学者や芸術家やミュージシャンがこのような経験をされるそうで、「自分とは全く違うものが舞い降りてきて、勝手に創られていく」と聞いたことがあります。
彫刻家・・・「木を彫って仏像をかたどっていくのではなく、最初からこの木の中にある仏像を彫りだす」
数学者・・・「寝ている間に女神が教えてくれた」
これらはまさに、人知を超えた世界の話です。
禅ではこの自分ではない自分を「一無位真人(いちむいのしんにん」といいます。
「赤肉団上(しゃくにくだんじょう)に一無位の真人有り」
この肉の塊である身体には、何者でもない真実の人がいるということです。
長い間、幾度となく同じ作業を繰り返しながら苦悩し、常に新しいものを生み出していく。その過程において突然自分というものが無くなるときがある。その瞬間に大発見や芸術というものが生まれる。人はそれを天才というけれど、生み出した本人が本人ではないと言っている。

仏教では「我」は無いといいます。
車はタイヤ、エンジン、シャーシ、ボディなど、あらゆるパーツが組み合わさって「車」となるわけで、人間も同じようにあらゆる細胞や臓器の上で仮に存在している。
だから「山田太郎くん」と呼ばれて「ハイ!」と返事をしている本人は、いろんな要素が集まった「山田太郎」という仮の名前で呼ばれるだけの存在ということになります。
自分ではない自分の中にある要素、そこにはいろんな縁が結びついている。何一つ欠けても「山田太郎」は存在しない・・・。
この結びついている要素の中にこそ、人知を超えたものが含まれているのではないでしょうか。インスピレーションとして舞い降りてくる瞬間こそが、一無位真人に触れた瞬間といえるのではないでしょうか。
その日その日を自分にご縁がある要素として意識しながら日々生活する。するといつの間にか自分と外の世界が溶け込み、そこから自然と生まれる言葉や芸術が人々の心に響くようになる。このスタイルこそが禅なのです。
映画
最後に映画紹介。もしもビートルズが自分1人しか知らないという世界になったら、というストーリー「yesterday」
売れないミュージシャンが事故にあい、元気になってからビートルズを一曲友達の前で奏でてみると・・・。
リンク