日常

般若心経~お味噌汁の味 心無罣礙(しんむけいげ)~

こんにちは。和尚です。

今日はみなさんが一度は耳に触れられたことがある有名な「般若心経」。世界でも訳され、たくさんの人々に信奉されているお経です。

その中にある一節を、「お味噌汁のお話」をもってご紹介いたします。

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無の数

「般若心経」は一般的によく読まれる大人気のお経。なぜかというと、短いから読みやすい!しかも真言(真理の呪文)が入っているから「ご利益がある」ということで、古来からお坊さんや一般の人々に大変親しまれています。

たった262文字の中には仏教の要素が詰め込まれ、そのブッダの教えも超えていこう!そして「心経」というぐらいですから、心にかかるお経、つまり心の持ちようによって苦しみなどはものもと無いんだと教えてくれる、勇気を与えてくれるお経でもあります。

キッサコの般若心経。コロナ終息を込めて、宗派を超えた60人以上の僧侶たちが唱和。修行時代の後輩でもあり、私も参加させていただきました。

般若心経は同じ文字がよく使われており、その中でも不・の3文字が特に多いです。

数えてみましょう。

「無」・・・21

「不」・・・9

「空」・・・7

ダントツで「無」が多い!

なぜこんなに多いのか。こんなに「無い」と言われたら、もうやるせないですよね。さあここで今日の「心無罣礙(しんむけいげ)」という言葉から、「無」の本当の意味をお話いたします。

お味噌汁の味

「心無罣礙(しんむけいげ)」

「罣(けい)」とは魚を捕る網のことで、「礙(げ)」とはひっかかること。

辞書には「邪魔をする,妨げる」と書かれています。

そこに「無」が付くと、「心に罣礙無し」とは「心の網にひっかからない」「拘束されないで自由自在に動きまわる」という意味になります。

こんな話があります。

お味噌汁の味

ある日夕食にお母ちゃんがお味噌汁を作りました。

できあがって味見をしてみると、いつもよりも味が濃い・・・。

そこへお父ちゃんが帰ってきていつものように「メシ」とだけ一言。

(ほんと不愛想ねえ・・・)と思いながらいつも夫婦の会話なんてこんなもの。さっそく用意してお味噌汁を出す。

お父ちゃんはいただきますも言わずにそのお味噌汁を一口すする。

すると一言

「今日のは美味いな・・・」

ビックリしたお母ちゃん。

(え?今日はお味噌入れすぎて塩辛いはずなのに・・・)

と思ってから、次はこんなことが心に浮かんできました。

(このひといままで褒めたこともないくせに、今日は塩辛いお味噌汁ってことで、わざと嫌味で美味しいなんて遠回しに言っているんだわ・・・)

しかしお父ちゃんのほうは、

(今日は力仕事でたっぷり汗かいてきたから、この味付けの濃いの味噌汁が特に美味い!)

と心底素直に伝えただけなのでありました。

どうでしょう・・・。こんなことってよくありませんか?

この話の中で一番のポイントはお母ちゃんの思い過ごし。

お母ちゃんは、普段の愛想がないお父ちゃんの素直な言葉を嫌味と取ってしまい、勝手に心の中で捻じ曲げて「苦しみ」を作っているのです。

これが「罣礙」です。

人間はこういった心が作り出す思い過ごしや思い込みによって、さまざまな誤解や偏見をし、ついにはエスカレートして争いや精神を病んだりと最悪な方向に向かっていくのです。

そうならないためにも「般若心経」には「無」がたくさん散りばめられているのです。

ハート・スートラ

「般若心経」は外国でHeart Sutra(ハート・スートラ)」と呼ばれています。

眼耳鼻舌身意
げんにびぜつしんい

色聲香味觸法
しきしょうこうみそくほう

これは人間がこの世を意識することができる感覚器官。

その器官を通して認識される対象を指しています。

仏教ではこのように表すのですが、般若心経ではこの言葉の頭に「無」が付きます。

英語にするとこうなります。

No eye, no ear, no nose, no tongue, no body and no mind.
No shape, no sound, no smell, no taste, no feeling and no thought.

NO,NOと立て続けに否定しているけれど、英語で言ってみると、なんともやさしい響きがあります。感覚器官は心に通じるもの。

その心が作り出している自分勝手な想像、そんなものは初めから無いんだというのです。

そして勇気はいりますが、凝り固まった固定概念を壊し、否定する。そして0(ゼロ)から新しい創造と想像(IMAGINE)のパワーが生まれる。

否定をすることによって心を軽くしていく般若心経の教え。

誰にでも受け入れられる理由がここにあるのです。

いつまでも何かに囚われている心を一度解放してみてはいかがでしょうか?きっとあなたの世界が変わります。

オススメ

「100分de名著」ブックス 般若心経


佐々木閑先生が「100分de名著」で解説された般若心経解説本。実にわかりやすく、やさしく書かれています。いままで引っかかっていた難しい言葉や仏教の世界観などがこの一冊でまるわかり。回りくどくなくシンプルでコンパクトな本となっています。

キッサコ HERATSUTRA


 

「聴く」般若心経。その音色と歌声は世界に広がります。百聞は一聴に如かず。心に響きます。