こんにちは。和尚です。
人間、相手によって過去にされたことをよく覚えているものです。
それが積もり積もって「恨み」となる。
今日はこの恨みの一つ「食べ物の恨み」のお話。


俺のファンタグレープ
檀家さんの兄貴こと「やっさん」
やっさんは普段あまりお酒を飲まないのですが、週一回の金曜日、自分のご褒美として行きつけのお店で一杯やるのが楽しみ。
お酒が入るといつも無口で謙虚な顔がほぐれ、お口の滑りが良くなり饒舌家となります。
だからだいたい金曜の晩7:30頃に私の携帯が鳴ると、「やっさんか?」となるわけです。

駆けつけ、店の扉を開けるといつもの決まったカウンター席にやっさんの姿が。その顔は満面の笑みで、すでに出来上がっている状態。
「まあ座れ」
といわれ、バンバン酒を注いでくる。
会話はいたってシンプル。
「なんともあらへん」の連発。
その後必ず店のカラオケ(そんなに上手くはない)を熱唱というコースで今宵も夜が更けていくのです。
そんなやっさん、ある日いつものようにお酒を飲みながら「お前のオヤジに一つだけ恨みがある・・・」と話を切り出してきました。
どんな話かとドキドキしていると、どうもやっさんの子供の頃の話。
「お前のオヤジにファンタグレープを飲まれたんや!」
ファンタグレープ?
「ワシは子供の頃、じいさんの法事の時にお前のオヤジにお経を読んでもらった。
終わってから食事のとき(田舎では法事の後席がある)に、それぞれお酒を注いで回る。
そのときにお前のオヤジはお酒が飲めないから、代わりになるものと注文したんや。
それでお茶や水、そしてオカンがワシのファンタを冷蔵庫から出してきた。
お前のオヤジはすかさずファンタを選びやがったんや!」
やっさんは空になったコップにビールを自分で入れて、グッと飲み干しさらにこう続けた。
「あのファンタはな!ワシが学校から帰って飲もうとしてた、すごく楽しみにしてたファンタやったんや!それがお前のオヤジに飲み干され、一週間ショックやったんやぞ!」
なるほど、そりゃオヤジはひどい。しかし出してきたあんたのかーちゃんが悪いのでは?
「食い物の恨みやぞ。一生忘れへん!」
はい、すいません。今日はお詫びにおごるっすよ^^やっさん。
といいつついつもサラっと勘定を出してくれる男前なのである。
そして今日も元気にカラオケ熱唱で、私を安心させてくれるのでした。
