こんにちは。禅宗のお寺、潮音院和尚です。
禅問答の公案について、第2回のお話です。
今回は日本の禅と、公案集について。

日本の禅
さて、まずは日本の3つの禅宗について。
- 曹洞宗・・・道元禅師が伝える。総持寺と永平寺が本山。黙照禅(もくしょうぜん)坐ったままの姿が悟りの完成。
- 臨済宗・・・栄西禅師だ伝える。主に京都、鎌倉とそれぞれ五山ずつの本山がある。看話禅(かんなぜん)公案を解いて、悟りを引き出す。
- 黄檗宗・・・隠元禅師が伝える。本山は萬福寺。中国式の禅や文化を伝えた宗派。隠元禅師は木魚やインゲン豆を日本に伝えたことで有名。
上のとおり、曹洞宗は、無念無想(とらわれない心)でただひたすら坐る黙照禅。
臨済宗は師と弟子の間で公案を問答する、対話重視の看話禅。
潮音院は臨済宗相国寺派なので、②というわけだ。
つぎはどんな公案集があるか紹介していくよ。

公案集
公案集というのは究極のなぞなぞテキスト。昔のお坊さんたちがこれを使って問答し合い、悟りのきっかけとなった内容を編集したもの。
何種類かあるので紹介するよ。
公案とはもともとは中国で裁判や公文書を意味する。
禅の修行者が、悟りの機縁として用いる祖師の言葉や行動を連ねた古則のこと。主に坐禅をしながら取り組む。
臨済宗では1700則あるといわれている。(景徳傳燈録)

- 臨済録(りんざいろく)
作者 臨済義玄(?~867)
編纂 三聖慧然(生没年不詳)
- 碧巌録(へきがんろく)
作者 雪竇重顕(980~1052)
編纂 圜悟克勤(1063~1135)
- 従容録(しょうようろく)
作者 宏智正覚(1090~1157)
編纂 万松行秀(1167~1246)
- 無門関(むもんかん)
作者 無門慧海(1183~1260)
持込 心地覚心(1207~1298)
- 槐安国語(かいあんこくご)
作者 宗峰妙超(1283~1338)
編纂 白隠慧鶴(1686~1769)

そしてそれが終わったら、また違う公案集を提唱されるということなんだ。
悟りの検死
主な公案の内容
犬に仏性(仏さまのこころ)はあるのか
富士山を荒縄で縛ってもってこい
両手を使わず、片手だけの音をもってこい
これが師匠と二人だけで問答していくことになる。
禅問答は、死に物狂いで公案を練り上げてきた弟子の境涯(境地)を師匠が見極める、双方命がけのやりとり!
師弟関係だけではなく、達人同士でも行われる。
「挨拶」って言葉があるよね。
これも禅問答を表している言葉で、「互いに和みあって相手の心を開き、その中に自分の心を投げ入れること」を言うんだよ。
「挨」には、(押し開く、近づく)、「拶」には、(迫る)という意味があって、「挨拶」という熟語は、もともと「押し合って進む」という意味だったんだ。
挨拶は適当ではいけない。しっかりと相手に対して伝わるようにしなければならないってことなんだ。
で、この公案集を勉強して、人にきたり本に書いてあるような同じ解き方をしていけば悟れるってこと?
やはり大事なのは四聖句にもあるように、体験と参究。
つまりしっかりと坐禅をし、日々の生活の中で自分の心と照らし合わせていかなければならないんだ。
公案というのは祖師方が悟りに至った道筋が書かれた古則というだけであり、例えて言うなら「悟りの検死」という作業なんだよ。
大切なのは道筋!
公案は「究極のなぞなぞ」
まずは解き方がちゃんとあるから、その方法を次からお話していくよ。
