こんにちは。禅宗のお寺、潮音院和尚です。
テーラワーダの風・番外編③
今回は食べ物についてのお話。
私の学生時代の論文が「原始仏教僧団の食についての研究」でした。そしてまさか自分が実際に律によって食されているお坊さんたちの現場に立ち会うとは。
禅宗のお寺では、食事を「粥座」「斎座」「薬石」と呼んでいます。この説明についてはこちら
タイのお坊さんはどんなものを食べているのか紹介していきます。


乞食(こつじき)


これを「乞食(こつじき)」というんだよ。
奥の黒い衣は私で、草鞋を履いています。
これは禅スタイルなのですが、上座部仏教(律を守っている南の仏教)では、基本托鉢のときは裸足と決まっています。

現在日本では施しは食物ではなく、お金をいただくことがほとんど。しかしタイでは100%鉢に入れられるのは食物でした。
さて、その食物はどんなものか紹介していくよ。
食べ物紹介

人さまから施しを受ける「乞食(こつじき)」ってことだから、もっと食べ残しや、粗末なものばかりだと思ってたよ。
最初はどんなものが食べられているのかとても気になっていたんだけど、一緒に托鉢に行くと、村人たちがどんどん鉢にたくさんの食材を入れるんだ。それで帰ってきたらこんな豪勢な食事が用意されるんだよ。


袋に小分けしてあるのは大切な意味があるんだ。村人は徳ポイントを貯めたい(徳ポイントはこちら)。だからたくさんのお坊さんに施しをすればするほど、ポイントが稼げるってわけさ^^
ちなみにこの中にはお肉はない。ここの村人が基本ベジタリアンだったということもあるんだけど、基本お肉は食べない。
しかし原始仏教ではお肉を食べていたという記述も残っているんだよ。
具体的に言うと、食べてはいけない肉は、「律」によれば、人、象、馬、犬、蛇、ライオン、虎、豹、熊、ハイエナ。
となると食べてもいい肉は、牛、豚、鳥、マトンなど。猫も食べていたかも^^;
「肉を食べちゃいけない」という考えは、仏教が広まっていくうちにどんどん戒律解釈も厳しくなっていったり、その土地土地の文化との融合、お坊さんたちが自給自足(禅宗では自給自足を推奨)するようになってきたからなんだ。
次第に殺生と結び付けて「肉はダメ!」という考えになっていったんだよ。
でもお坊さんとしてはやはり殺生戒というのを大切にして、悪食になってはいけないということを心掛けないといけないね。


その5種とは、純正バター、フレッシュバター、油、蜜、糖。
それぞれ今の食物で何に当てはまるかはいろいろと記述があるんだけど、これらは「薬」として使用することができた。そして時代は流れ、おやつのように用いられることになったんだ。
ボクもおもてなしで、マルちゃん(と勝手に名付けたかわいいお坊さん)がもってきた甘~~~い手作り蜜ゼリーをいただいたよ^^
残念ながらその写真はないんだけどね^^;お坊さんたちも午後なのに美味しそうにムシャムシャと食べてたよ。
で、この「薬」という名残が禅宗に伝えられて、夕ご飯のことを「薬石(やくせき)」と呼ばれるようになったんだね。
常識とは?

これも名誉なことで、彼女たちの功徳となる行い。
この時お坊さんたちは決してお礼はしない。なぜなら施しを期待するということは、執着の心が生まれる。つまり「業」が付くということなんだ。(業をつくることは輪廻する最大の原因)
これは托鉢や寄付をされても同じ態度で変わらない。
在家の人たちの気持ちは、施しにも目もくれず、一心に修行するお坊さんであってほしいんだ。
でもこの話を聞くと、常識というものが世界によって全然違ってくるんだね。
自分だけの価値観で物事を決めつけるのは良くないんだって勉強になったよ。
一般社会と僧団の共存

とはいってもかなりの量が余っているので、みんな足らなくなることはない。
奥に見えるのが台所。「カッピヤクティ」というんだ。
律ではお坊さんは自給自足はもちろん、食物も貯蔵してはいけない。しかしそんなことばかりしていれば、修行の効率も悪くなる。だから便宜上、信者のウパーサカ(優婆塞)たちがお坊さんの代わりに動ける施設が境内につくられるようになったんだ。
この便宜的な応用法はいろんなところにあるんだよ。
お坊さんにも有難いし、信者さんにも徳ポイントが付くしと、まさに一石二鳥だね。
日本では考えられないようなことだけど、いかに仏教僧団が合理的に組織されていて、現代まで続いているのがよくわかるね。
学生時代は本だけの知識だったけど、やっぱりこうして実際に体験してみて、腑に落ちることばかり。2500年も教えが続いているんだからすごいことだよ!
今後もどんどん紹介していきまーす^^