こんにちは。禅宗のお寺、潮音院和尚です。
2回目の内容は現地の方々にお坊さんとして認められたこと。
あれから1年後。またあのタモ寺に帰ってきました!
続・テーラワーダの風
まずはパート1。到着からの大波乱をどうぞ。
※こちらは2019年のお話となっております。

序・今回のテーマ
新元号は「令和」。これで私も3つの元号を跨いだことになりますが、これまでの時代背景を少し考えてみます。
昭和は先の大戦より国民が艱難辛苦を舐め、復興と高度経済成長を遂げた時代。平成になるとインターネットの普及により、便利ではあるが人々がその急激な情報社会化や経済成長についていくことが難しい、心の飽和状態となったような時代だったように感じられます。
そして令和となりましたが、いったいどの様な時代になるのでしょうか。
漢字の意味を調べますと、令はみことのり。和は協調、やまと。いま一度、忘れかけた日本の心を見直し、その情のある規律によって人々が和合していこうという意味合いが込められているのではないでしょうか。

日本からの道のりもワクワクしていただろうね!
空港からの道のりからなかなかハード。
タモ寺の信者(ウパーサカ)が迎えに来てくれるんだけど、車の運転がヤバイ!
飛ばす飛ばすで普通の道でも時速100kmぐらいはアクセル踏んでたね^^;
タモ寺も今回で3回目となりますが、3月末だったので、私にとって平成最後の研修となりました。研修はいつもテーマを決めています。
・1回目は日本とタイの仏教がどう違うのか。
・2回目は雲水時代の衣で向こうの生活を自らが体験し、托鉢で現地の人から少しでも施しを受けることができるのか。
・3回目の今回は、我々臨済宗の宗旨である禅問答、公案をもって、向こうの生活に合わせながらどこまで練ることができるのか。
この研修の始まりは、花園大学教授の佐々木閑先生と、タモ寺のお坊さんとのご縁によるものですが、前回からは私の友人である曹洞宗の山崎禅師も参加いただきました。

朝日が昇る前から托鉢。右が山崎師。
特に今回は彼と2人で助け合いながらの研修となりました。3回目となるともうここでの生活は慣れたものだとお考えの方もいらっしゃるとは思いますが、まったくその逆。
なぜならお坊さんたちの厳しいご指導。
禅僧ならば多少過酷な環境でも大丈夫だというお考えにより、次々と他では考えられないハードなミッションを毎回課せられていくのです。
青ざめるスケジュール表
まずチェンマイからダモ寺への移動中に渡されたスケジュール表。
一般の方々も何人か参加していましたが、表には明らかに私たち2人だけ違うスケジュールが書かれています。
住むところは今回からクティと呼ばれるお坊さん専用の住居。(前回は一般の居住区にあるコテージ)
托鉢、瞑想などは当然なのですが、何よりも驚いたのは、最終日にダモ山泊と書かれていたことでした。
ダモ山がどういうところなのか、後ほどご説明しますが、とんでもない山で、とにかくこの文字をみて2人が青ざめたことは間違いありません。
横で私たちの凍り付いた顔を見ていたお坊さんと先生だけはニヤニヤうれしそうにされていたのを今でもはっきりと覚えていますが・・・。
佐々木先生御講義。仏教の歴史やお経のことなどを大変わかりやすくお話されています。サムネ画はみしょくんデザイン担当の潮音院寺庭。先生の本にもこちらのお話が書かれています。
悲劇


クティ。大昔の時代に戻ったような質素な建物。
さて、約3時間かけてタモ寺へ到着。荷物をそれぞれのクティへ。私が今回案内された場所は、天然の岩を礎に改築された建物でした。
このような素敵なところで生活できるとは光栄だと思っていた矢先に、ここでも悲惨な情報を伝えられるのです。
そこの部屋、コブラが出るよボソッ・・・
「なんですとーーー!!!!??」
以前ここに住んでいた若いお坊さんによると、ある日しっぽが見えたので猫が部屋へ遊びにきたのだと思い近づいてみたところ、それはしっぽではなくコブラだったそうです。
そして気づいた瞬間には片目に毒をかけられたそうです。すぐに治療して大事には至らなかったものの、もう少しで隻眼のお坊さんとなるところだったから気を付けてくださいと、何食わぬ顔で私に忠告してきたのでした。
サソリや得体の知れない毒虫などは私も何回か出くわしましたが、コブラは別次元の恐ろしさ。

タイは雨季と乾季に分かれていて、乾季になると気温は38度ほどになります。この天然の涼しい岩屋のクティは、日中人間には過ごしやすいのですが、ほかの生き物にとっても最適。
コブラもそのうちの一匹ということです。そしてその事件があったのは忠告を受けた日からわずか1か月ほど前。入居当日は恐怖で全く眠れませんでした。
そしてその2日後。托鉢が終わり部屋で休んでいると、なんと入口の扉からしっぽのようなものが見えたのです。
戦慄が走り、これはもう飛行機の往復切符は使えないだろうと覚悟しました。恐る恐る近づいてみると、それはかわいらしい猫のほうでした。

のちに山崎師によると、屋外のトイレではサソリがウロウロして満足に用も足せなかったそうです。これも恐怖に打ち勝ち、平常心を保つための修行なのか解りませんが、そのような状況の中、研修は続いていきます。
パート2に続く・・・