こんにちは。禅宗のお寺、潮音院和尚です。
テーラワーダの風・番外編①
タイと日本の違いから学ぶ仏教の戒律。


戒律

以前紹介した布薩堂。お話はこちら
2500年間、サンガ(仏教僧団)が維持されるために定められた「律」。
その律を遵守し、数々の大事な儀式を遂行するためのお堂。
ここから古代仏教僧団の規則についてお話します。
新月と満月の月2回(15日・30日)ここに集まって、具足戒(パーティモッカ 波羅提木叉)とよばれる戒本を読んで、この半月の間にちゃんと仏教の教えを守っているか確認するための儀式なんだ。
戒・・・お坊さんとしての心がけ
律・・・僧団を維持するための規則
例えば入団許可方法から托鉢や食事のときの作法など、集団生活をするうえで必要最低限のルールのこと。
これらは
①僧団の行事執行マニュアル
②個人が守らなければならない行動に関わる規則
の2種類あって、守らないと
①その儀式が無効になる
②罰則がつくことがある
ということになってしまう。
罰則
これは一般の社会でもダメなことだよね。
これは波羅夷罪 (はらいざい)といって、僧団で一番罪の重い永久追放の罰則なんだよ。
この波羅夷罪 は4つあって
①人を殺してはいけない
②他人のものを盗んではいけない
③他人と性的交わりをしてはいけない
④自分が悟ってないのに悟ったと言ってはならない
というものなんだ。
その他の罰則をいうと、一定期間お坊さんの権利をはく奪されて、許されるためには20人以上の僧の前で罪を告白し、懺悔しなくてはならないという僧残罪(そうざんざい)や、男のお坊さんが女性に好意をもつような話をしてはならないなどの不定罪(ふじょうざい)、所有物や食事の時間などいろんな細かい規定の禁止に対して、数人のお坊さんや長老に告白して許しを得る罰を波逸提(はいつだい)というものがあるんだ。
前にうちのお寺にタモ寺のお坊さんが来たとき、現地では海がないからということで連れて行ったら喜んでくれたんだけど・・・
急にハッ!と気づいて反省しはじめたんだよ。どうしたのかと聞くとお坊さんははしゃいだらダメなんだって。
常に心を平常にしておかないといけないからと。
そこまで厳しいのかと思ったんだけど、
つまり喜怒哀楽は業をつくるから、輪廻の原因となるからだろうね。(業のお話はニルヴァーナ御朱印のこちら)
まあ罰則は伴わずとも、こんな小さな心の動きでもテーラワーダのお坊さんたちは日々気を付けているんだよ。


タイから送っていただいた、出家作法や具足戒の翻訳本。
古代仏教の名残
これも日本に律が根付かなかった違いなのがよくわかるよ。(律が根付かなかった理由はこちら)
例えばお坊さんが着けている袈裟(けさ)
これは向こうのことばでカーシャーヤという言葉が音写されたもの。
出家するには守るべき4つの生活スタイルがあるんだ。
①糞掃衣(ふんぞうえ)・・・ツギハギの衣
②乞食(こつじき)・・・・・自給自足しない
③樹下住(じゅかじゅう)・・樹の下で寝起き
④陳棄薬(ちんきやく)・・・牛のおしっこの薬
これらの方針はあくまで最低限の規則で、もし在家信者からお布施でいただいたものや建物があれば、それを利用してもよいとういことなんだよ。
ただ①はどんなにきれいな布でも、それで衣をつくるときには必ずツギハギにしなさいと律に記されているんだ。
つまり日本の袈裟(カーシャーヤ)もその名残でツギハギになっているんだよ!
こういったことで、ほかにもさまざまな名残があるんだ。それはまた違う機会にでもお話するよ^^

牛のおしっこの薬なんて、かえって具合悪くなってしまいそう^^;
でもこうしたことに耐えて修行してこられたお釈迦さまをはじめ、当時のお坊さんたちのおかげでこうして仏教が大きくなったんだね。
ボクたちもしっかりと心得をもって修行がんばるよ!
では次回は律の規則によって建てられた布薩堂から、今現在の日本に伝わっているおもしろエピソードを紹介していくよ^^
番外編パート2に続く・・・